今回の2か月の買い付けのベースは、デンマークのコペンハーゲンでした。滞在も残り2週間を切り、梱包に勤しんでいる時「スウェーデンのものが少ない!もう少しカラフルでポップな感じのものも欲しいなぁ」と思い…。近くのマルメに行こうか、ストックホルムに行こうか、いや、ちょっと別のところに行ってみたいかも。
思いついたのは、スウェーデンの西海岸にある人口第二の都市、Göteborg(ヨーテボリ)でした。調べてみるとコペンハーゲンからバスで4時間半、値段もお手頃。すぐに次の日の朝のバスを予約し、早朝に向かいました。長距離バスは快適で、お昼過ぎにヨーテボリに到着しました。
「腹が減ってはお宝探しもできず」と、入った小さなレストラン。周りの人が食べていたのが美味しそうで注文したのが、〝フィッシュスープ”でした。
さらっとしたクリーミーなスープなのですが、中に魚や貝、海老がゴロゴロ入っていて、味も濃厚で、富山県出身の私も大満足!ぜひ富山の魚でも作ってみたいです。腹ごしらえもしたところで、アンティークを探しに。
外の机にたくさん並べてあるアンティークショップ。
船や海、マリーングッズに特化したアンティークショップ。
倉庫のような大きなヴィンテージショップでは、スウェーデン伝統工芸品で、松の木で編んだ古い〝スポーンコリ”もありました。
買い付けもだいたい終わり、アンティークショップに併設されたカフェで一休みしていると、前にいたおじいちゃんグループのひとりが話しかけてくれました。
そして、みんなで食べようとしていた「街でいちばん」というセムラ(スウェーデン伝統菓子)をお裾分けしてくれました。
2月に入ると街中で見かけるようになったセムラ。見るたびに食べたい!と思っていましたが、まさかこんな形で頂けるとは。
カルダモン入りの固めのパンに、アーモンドクリームと甘すぎないホイップクリームがたっぷり入った美味しいセムラを頬張っていると、グループの別のひとりがこんなことを教えてくれました。
「film festivalで来たの?僕はプロデューサーで、ヨーテボリフィルムフェスティバルを立ち上げだひとりなんだ。いい映画がたくさんやってるから、ぜひ行ってみて」と、パンフレットを見せてくれたのです。
そんなこととは全然知らずにヨーテボリに来たわけですが、これは行かなきゃ!と思い、すぐに近くの映画館を探し、映画を見ることにしました。
上映していたのは『Sudden Outbursts of Emotions』というフィンランドの小説が原作の映画で、私の本『ゆるりと風に。ここは北欧』でも少し書いたオープンリレーションシップ(パートナー以外の関係を持つことに合意した関係)についてでした。
自分の本で言及したものの、どういうことかいまいち分かっていなかったのですが、映画をみて「へー!」と思うことも、「やっぱりそうだよねーうんうん」と納得することもたくさんあって、ちょっとだけ理解が深まったように思いました。映画のあとには、Paula Korva 監督の話も聞けました。
「しあわせも人生も、自分で見つけていけばいいんだよ」と、背中をまたポンっと押されたような爽やかな作品。ぜひ、日本でも上映されてほしいです。
素敵な出会いやインスピレーションに満ちたヨーテボリの旅。これだから旅はやめられません。今回は弾丸でしたが、次はもっと暖かい時期に、もう少しじっくりと時間をかけてこの街に来ようと心に決めました。
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【プロフィール】
鍋島 綾(富山県生まれ)
大学でデンマーク語と北欧社会福祉を専攻。会社員勤めの後、アンティークバイヤーとして2016年から北欧と日本の間を行き来している。2024年に『ゆるりと風に。ここは北欧 —Just as I am』(桂書房)を上梓。
・Instagram:https://www.instagram.com/imaya.vintage/
・YouTube:https://www.youtube.com/@imayatravel/featured
・オンラインショップ:https://imaya-antique.com/
企画・編集/永井千晶