アパレイユを表面張力ギリギリまで注ぎ、焼き上げている
Jun Blend Kitchenの名物「野菜キッシュ」は、ありえない厚みに、いつも圧倒される。高さにして、約4.5cm。我が家にあるキッシュ皿の高さが2cmくらいだから、なんと倍以上!
なのに、生地がパリっとサクサク状態をキープしていて、すごく不思議。家で作るキッシュは、いつもベチャとなっちゃうんだよね。
いったい、どこの生地を使ってるの?(←既製品、前提の質問)
「もちろん、生地から手作りだよ~~」
ありゃ…、それは、大変な失礼をばっ(汗)
「もし、冷凍の生地があるなら使いたいくらいだよぉ~。この工程を知ればね…」
この「野菜キッシュ」。実は、人気メニュー「チキン南蛮」よりも以前から登場している。
キッチンのオープン当初から出している3大メニュー「サラダプレート」、「カレー」、「ナムル丼」が、なんとも軽食としてさっぱりしている。ここにもうちょっと、ガツンと来るものを加えたい!そう考えたJunちゃんは、ドデカイキッシュを作ろうと考えた。
「大抵、お店で出される前菜のキッシュって、ちっさいじゃん!せめて、あと3口味わいたいって、いつも思っちゃう。だから、一切れで満腹になるようなキッシュを作ろう!って」
直径26センチ、高さ4.5センチ。なんともアメリカンなサイズのキッシュ皿を見つけたJunちゃんは、即決購入。しかし、この皿に合う冷凍シートが存在しないことを知ったのは、その後のことだった。
生地がないなら、作るしかない!知人のパティシエールに習い、以来12年、スタッフみんなで生地から手作りしている。
「キッシュってさー、ホウレンソウとベーコンが入っていたら、もう美味しく仕上がるじゃない?私は、敢えてベーコンに頼らない、うまいキッシュを目指したんだよね~」
肉の旨みに頼らないならば、美味しいタマゴがないと始まらない。
使うのは地元高岡は『ひかりがま農園』の「越中名水赤卵」。惜しみなく使う生クリームは動物性。それに塩と少しのコンソメと。
アパレイユ(キッシュのたまご液のこと)に入れるのは、ジャガイモやニンジン、タマネギ、季節ごとに採れる青菜など、本当に野菜だけ。
決して、手に届かないようなスペシャル素材を使っているワケじゃないのに、こっくりと濃厚で、食べ応えが十分にある「野菜キッシュ」。なんでだろ?
「これだけ手間を惜しまず作ってるからねぇ~。これで、ワンホールから8切しか取れないんだから!」
「ここよ、ここ!サックサクでしょ?」
そうそう!この、サクサク生地の秘密を知りたかったのでした。
「しっかり生地を下焼きすること。器にピッタリ、綺麗な平面をキープしながら敷いて。しっかり重しをのせて焼くんだけど。小豆とかで代用しちゃダメよ。ちゃんと重みのあるものを使って」
あら、私、面倒くさいからそのまま下焼きしてたわよ。
「あのさー。面倒くさいと美味しいは、相容れないからぁ(笑)」
生地を下焼きする時に膨らんでしまうと、そこにアパレイユが入って生地が柔らかくなってしまうらしい。しっかりと生地を押さえて焼く必要があるのは、そういう理由から。
「それに、冷凍の生地使ってるんだから、せめて重しをして焼こうよ~(笑)」
うん、お家キッシュ大改善の余地ありだわ!!(笑)
【Junちゃん's ポイント】
★お家でサクサクなキッシュ生地に仕上げるには、もうひと手間!キッシュの生地が焼きあがったら、熱いうちに卵液を塗ってね。余熱で卵液が固まり生地の表面がコーティングされるよ! |
それにしても、このビックサイズのキッシュ。
まず生地を焼き上げるのに、およそ30分。さらに、具を入れてから中まで火が通るように、温度や方向を変えたり、焦げないようにホイルで包んだりしながら、完成まで1時間以上もかかるらしい。
そこから、さらに1日寝かせて、ワンホールから8切しか取れない貴重な「野菜キッシュ」が出来上がる。
「ね、分かるでしょ?もし冷凍生地があるなら、使いたいくらいの長い工程…」
ランチタイムに「野菜キッシュ」の注文が入ったり、急なテイクアウトが入ったりすると、あっという間になくなってしまうのは、簡単に想像ができる。
人気メニューだからこそ、なかなか食べられない人もいるんじゃないかな?
「そう、だからテイクアウトの注文は、せめて3日前にはいただきたい(笑)!」
・Jun Blend Kitchen
【バックナンバー】
文/野菜ソムリエ 永井千晶