旅先で見つけた、小さなときめきを日常に。
北欧のアンティークを買い付けていると、「これこそ北欧らしさ!」と感じるアイテムに出会うことがあります。それは、現地の暮らしの中で長く使われてきた道具でありながら、日本の生活にもすっと馴染んでくれるようなもの。
今回はその中から、日常に北欧のぬくもりをそっと添えてくれる4つのアイテムをご紹介します。
①キャンドルホルダー
「光をともす文化」から生まれた美しい日用品。冬が長く暗い北欧では、キャンドルの灯りが日常の風景のひとつ。アンティークのキャンドルホルダーには、そんな暮らしの知恵と美意識が詰まっています。陶器やガラスなど、素材もさまざまですが、どれも控えめながら凛とした存在感があるのが特徴。窓辺やダイニングテーブルにそっと置くだけで、穏やかな北欧の時間が流れはじめます。
② チーズやバターなどの乳製品用の食器
「食卓の主役」を引き立てる、やさしいデザインが魅力。北欧の食卓で欠かせないのが、チーズやバターなどの乳製品。専用のバターディッシュやチーズドームは、ただの器ではなく、食事の時間を少し特別にしてくれる存在です。
例えば、陶器のバターケースや、バターナイフ、カッティングボードなど、どれもシンプルだけど、ちょっとしたデザインに、日々の暮らしを楽しむ人々の様子を感じとることができます。
③ ジャムを入れる容器
「手作りの喜び」を彩る、愛らしいアイテム。北欧ではベリー類が豊富に採れることもあり、ジャム作りが日常に根付いています。そのため、ジャム専用の小さなガラス瓶や陶器のポットもよく見かけます。特に、ベリーのデザインが描かれたポットは可愛らしく、見るだけで北欧の爽やかな夏を感じます。
④ シガレット用品
「大人のたしなみ」を支えていた、美しいプロダクトたち。一見、北欧らしさとは縁遠く感じられるかもしれませんが、実はヴィンテージ品に多いのが、シガレットケースや灰皿。シガレット用品には見えない可愛らしさです。
現在では、喫煙率が大幅に下がった北欧諸国ですが、50年ほど前までは喫煙がごく日常的で、デンマークのマルグレーテ2世元女王がスモーカーだったことでも知られています。
今では、小物入れやフラワーベースとして使うのもおすすめ。時代の空気をまとった道具たちに、新たな役割を与えるのも、アンティークの楽しみのひとつです。
さいごに。
アンティークには、時間の中で少しずつ育まれてきた味わいがあります。それらを手にすることで、北欧の人々の暮らしや文化にふれることができ、日々の生活がほんの少しあたたかく、豊かなものに変わっていく──。そんな静かな喜びを、これからもお届けできればと思います。
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【プロフィール】
鍋島 綾(富山県生まれ)
大学でデンマーク語と北欧社会福祉を専攻。
会社員勤めの後、アンティークバイヤーとして
2016年から北欧と日本の間を行き来している。