『Junちゃんの元気ごはん』#5夏バテに冷や汁

2023/9/06 12:00:00

今年の夏は、暑すぎる。35度以下だと、ちょっと涼しく感じる。


「わかる。暑い」


暑すぎて、アイスすら食べたくないもん。


「うん」


麦茶にも飲み飽きて、何を飲んでいいかも、わからない。うんうん、とうなずきながら、これでもどう?と、目くばせするJunちゃん。店内の冷蔵庫が宮崎色強くなってる!

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Junちゃんの所に行けば、アレがあると思って、やって来たのだ。宮崎の郷土料理・冷や汁。


もう、何年前になるだろうか。まだ、会社員だった頃、激暑の取材帰り。とうに昼時間も過ぎ、でも何か口にしなきゃと、クルーと一緒にかき込んだ、Junちゃんの冷や汁。食欲など無かったのに、不思議とスルスル食べられたのだ。


実家だと、夏は、やっぱり冷や汁食べるの?


「いや~、それが、当たり前にあるけど、当たり前には食べないんだな~」


ん?


「どちらかと言えば、母のみ食べて。父は食べないし。私もあまり…。魚(の身)がボーン、キュウリがバーンって、入ってくるでしょう」


意外だった。冷や汁と言えば、宮崎県のザ・郷土料理で全県民が大好きな食かと思っていた。冷や汁の好みは、宮崎県内でも賛否が分かれるらしいのだ。


冷や汁は、こうやって作られる。


すり鉢でゴマをすり、焼いた魚の身をほぐし入れてさらにすり、味噌を加えてもっとすり合わせる。このウマウマ味噌を、すり鉢の内側に塗り付けてから、コンロの上にひっくり返し、香ばしく焼き付ける。そこに、水またはだし汁を注ぎとき、冷たく冷やしたところに、キュウリや大葉、豆腐などを入れて、ごはんにかけていただく。


お茶碗一杯で完結してるから簡単な料理かと思っていたら、なんと手間のかかることよ。


冷や汁の基本は、魚と麦味噌を使うところ。焼いた干物のアジの身をほぐして入れたり、イリコの頭とハラワタを取ってミキサーにかけて入れたり、ピーナツをつぶして入れたり…。各家庭によって、使う食材やアレンジが、ぜんぜん違うらしい。


「宮崎の郷土料理店で、チキン南蛮付きの冷や汁定食っていったら、1,500円とか1,800円とか、結構なお値段よ」


うん、その工程を聞いたら、分かる。


「でも、ウチは『冷や汁一丁!』で、お手軽に食べてもらえる工夫をしてるの」


Junちゃんのキッチンでは、アジやサバ、シイタケといった旨味たっぷりの粉末を、宮崎から取り寄せた麦味噌とあわせて、フライパンで焼きつけて作っている。それなら、私にもできるかも。自家製の味噌なんだ~と、得意げに話したら。


「冷や汁は麦味噌じゃないとダメよ。麦味噌は体温を下げるの。大豆や麹味噌は、体温を上げちゃうから」


なるほど、夏に食べる冷や汁、理にかなっている。



冷や汁は、冷たい味噌汁をごはんにかけたもの、と思われがちだけど、味噌汁とは、全然違う。似て非なるもの。キッチンでは、10年ほど前から夏のメニューとして出しているが、ここ富山でも、リピーターと、決して注文しない層で真っ二つに分かれるらしい。


「特に60代以上は、少ないかな。70~80代の方は戦時中のマズい飯を想像しちゃうって」



ビジュアルで損してるのかな…


酷暑でヘタっている私の胃腸には、嬉しい冷や汁。キュウリの清涼感、豆腐の口触り、胡麻の風味、汁のコク深さでさらりと喉を通っていく。量もちょうどいい。栄養は取れたぞと、満足できる。


キッチンの冷や汁、実は春に一度、登場している。


「冷や汁って、本来、夏の食べ物なんだけど。富山出身で、現在東京にお住まいの方が、年に一度、チューリップフェアの時期に帰省するから、それにあわせて冷や汁をどうしても出して欲しいって」


で、Junちゃん、先発でゴールデンウィーク限定で、冷や汁を提供。


「その頃には、一応、キュウリも入ってくるからさー」


なんて、柔軟な…。


冷や汁の本格提供は、直売所に高岡産のキュウリが並び出す7月から9月頃までとなっている。残暑も厳しいから助かるね。


ウチの味噌は、麦じゃないんだよな~って方に朗報です(それ、私)。今年から、冷や汁を簡単に作れる“味噌だね”が登場している。家で冷や汁を食べさせたい、味噌を焼き付けるとかムズい、といった声にJunちゃんが応えたもの。


【Junちゃん's ポイント】
★冷や汁を美味しくつくるコツは、豆腐の水抜き
木綿豆腐を一度、お湯で湯がき、豆腐の中の水分を抜き出すと濁りのない冷や汁になるよ!


「あ、キュウリは、気持ち太目の輪切りにしてね。汁の塩分でクタクタになっちゃうから」

 

もう、晩御飯に何を食べていいかわからない、暑いから台所に立ちたくない、って私にピッタリだわ。


=つづく=


>>#4 玉ねぎドレッシングの秘密


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文/永井千晶(野菜ソムリエ)