『Imaya北欧便り』#6「北欧モダンの父」が作った森の墓地

2023/10/11 12:00:00

旅好きの私が世界で最も美しい街の一つだと思うのが、スウェーデンの首都ストックホルム。そして、そのストックホルムに来たら必ず訪れる場所があります。


それは、市内中心部から地下鉄で15分ほどのところにある、スコーグス・シュルクゴーデン(森の墓地)。


「北欧モダンの父」と言われるスウェーデンの巨匠、エリック・グンナール・アスプルンド(Erik Gunnar Asplund)が、生涯をかけて設計した共同墓地なのですが、世界遺産にも登録されている場所です。

スコーグス・シュルクゴーデンは、「死者は森へ還る」という北欧古来の死生観をベースに作られています。例えば、『復活の礼拝堂』に向かう長い一本道。最初は白樺などの明るい雰囲気から、次第に背が高く緑も濃い樹々になり、精神的故郷の森へかえって行く運命を直感的に感じさせるような、死を弔う家族や友人の心情に寄り添う、優しい作りになっています。




この墓地が普通の墓地と違うのは、墓石や礼拝堂がメインではなく、森がメインだというところ。




墓石も控えめで、教会や礼拝堂、モニュメントもとてもシンプルで、宗教性も感じないものになっているので、ふらっと公園に散歩に行くような感じで足を踏み入れることができます。主人公はあくまで自然。とても神聖で優しい場所なので、私は森林浴感覚で散歩したり、最後には墓地という場所にも関わらず、よく寝っ転がったりします。



そして欠かせないのは甘いもの。敷地内にある小さなカフェで、ケーキとコーヒーを買って外で食べていたら、可愛い鳥が来ました。

このケーキは、ベリーのクランブルパイ。外はサクサクのクランブル生地、中に季節のベリーが入っています。


ここに来ると、自然と一体になった気がして心が洗われます。そして「死」というものが、必ずしも怖いだけのものではなく、とても自然で身近なものであり、だからこそ精一杯楽しんで生きようという前向きな気持ちにもなれる、私にとってパワースポットのような場所です。


>>前回のお話


【プロフィール】


鍋島 綾(富山県生まれ)

大学でデンマーク語と北欧社会福祉を専攻。

会社員勤めの後、アンティークバイヤーとして

2016年から北欧と日本の間を行き来している。


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企画・編集/永井千晶