「わたしの人生は、実は、ZINEでつながってきてるんです」
と、静かにスゴイことを話しはじめた麻衣さん。その続きが聞きたくて、私の鼻がひくひくした。
ひらすまさんと一緒に、富山で「zineと、」の活動をしている小林麻衣さん。もともとは富山県内の一般企業で事務職をしていたが、ご結婚後に暮らし始めた茨城で、麻衣さんは現地のとある広告デザイン会社のライター(経験者優遇)求人に応募する。
「未経験だったから、履歴書に自作のZINEを同封して送ったんです」
それまでにやっていた事務のお仕事が大の苦手だったという麻衣さん。次に働く時は、やりたいことをやると、決めていたらしい。
麻衣さんのZINEに目を留めた、広告デザイン会社の社長から、「未経験者は採用できないのだけれど、同封されていたZINEがとてもよかったので」という理由で会社のサイトに、新たにWebコンテンツを作るから、そこに”旅レポ”を書いてみない?と、別枠での採用が決まってしまう。
そして、この”旅レポ”が、面白いようにご縁を結んでいくことになる。
麻衣さんが、旅先の東京で書店巡りをしていた時のこと。ZINEを多く取り扱う書店・甘夏書店を訪れ、店主とお話していたところ、『オバケダイガク』(※超個性派ZINE)の編集者が納品に来るよと教えてもらい北野留美さんと、初めて出会う。そして、次に向かった書店でも、再び、北野さんと顔を合わせる。これも何かのご縁ねぇ~と、自己紹介からの会話を交わすことに。
「ZINEの魅力などについていろいろお話した中で、富山の出身なら、先日、一箱古本市で隣にいたひらすまさんって人が、今度、古本屋さんを開くそうよ。富山に帰ることがあったらお店に行ってみたら?って、北野さんに言われたんです」
一箱古本市と言えば、まぎれもなく、ひらすまさんの人生を変えたキッカケとなったもの。
”旅レポ”を書くために訪れた本屋さんで、麻衣さんはZINE作家さんと出会い、そこから、ひらすまさんにつながっていく。
ご主人のお仕事の関係で富山に戻ることになった麻衣さんは、さっそく、ひらすまさんを訪ねる。
「ZINEが好き」という共通点でふたりは意気投合し、その後の「zineと、」の活動開始と相成った。そして、ひらすまさんがSNSでシェアした求人情報を、偶然目にした麻衣さんが、すぐさま応募。現在のお勤め先である、デザインとまちづくりの会社「ワールドリー・デザイン」に採用されるのである。
ワールドリー・デザインでは、小林麻衣 編集長の元、年イチのペースで「まばら本」というZINEを出している。2021年の発行から、今年で3冊目。ワールドリー・デザインのスタッフによる「思考、嗜好、取るに足らない日常のこと」がつづられているのだが、発行を重ねながら、その内容の濃さが増してきているのが読み取れて、実に面白い。
「わたしは、ZINEを広めたいとか、ZINE人口を増やしたいとか、そういうことじゃなくて。ZINEは、届くべき人に届けばいいなって思っていて」
穏やかで謙虚、静かに強い。麻衣さんって、そんな人だと思った。
もし、ZINEのようなものを書いていなかったら。
もし、履歴書にZINEを同封しなかったら。
もし、『オバケダイガク』の北野さんに出会わなかったら。
もし、ひらすまさんを訪ねなかったら。
もし、もし、もし、、、
いろんな「もし、」とその先を考えるとゾクゾクした。だって私は、麻衣さんに出会わなかったかもしれない。
ひらすまさんのお話を聞いている時にも感じたことだけれど。自分が楽しいこと、好きなことがあって、そしてそれを知っているって、代え難く強いのだ。
◎協力
・zineと、
Instagram:https://www.instagram.com/zinetoyama/?hl=ja
・ワールドリー・デザイン
WEB:https://worldly-design.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/uchikaworldly/?hl=ja
・ひらすま書房
WEB:https://www.hirasumashobo.com/
X:https://twitter.com/hirasumashobo
Instagram:https://www.instagram.com/hirasumashobo/
※現在、店舗での営業はお休みしています。イベント出店とネット販売の流浪スタイルで営業中!
〈企画・編集/永井千晶〉