『Imaya北欧便り』 #8日常の中に持つ特別な時間

2023/12/27 16:00:00

「コロニヘーヴでhygge(ヒュッゲ)してるんだけど、よかったら来ない?」


ある休日、友人からそんなメッセージがきました。コロニヘーヴとは、都市郊外にある庭つきの小さな家の集合地区のこと。都市部に住む市民が、庭を持ち、空気の良い環境で過ごせるようにと、かつて政府によって考案されたものです。高価な別荘というよりは、気楽に借りられるもので、休日や夏休みには、家族でバーベキューや家庭菜園などしながらゆっくり過ごす場所になっています。

私は連絡をもらってすぐ電車に乗り、友人のコロニヘーヴに向かいました。ハンモックやトランポリンがある広々とした庭には、リンゴ、ぶどう、イチジク、ベリーをはじめとする様々な果実が実をつけはじめていました。訪れたのは8月の初旬でしたので、小雨が降ると肌寒く、家の中ではすでに薪ストーブを焚いていて、ふんわりと温かな空間になっていました。


到着すると友人の娘たちが出迎えてくれ、前日に焼いたという甘いケーキと、温かい紅茶を持ってきてくれました。最近観たという映画の話題や、たわいのない話をした後は、それぞれベッドで横になって昼寝をしたり、本を読んだりとまったりして過ごします。



ここに来ると、いつも【hygge】という言葉が浮かび、実際に「hyggeだねー」という会話もしょっちゅう出てきます。デンマーク語を習い始めていちばん最初に覚えたのが、【hygge】という言葉だったほど、デンマーク独特の言葉なのですが、日本語に訳すと「心地良い」「ほっとする」「あたたかい」などという意味になります。

これはケーキの後に出てきた『スモーブロー』。デンマークのオープンサンドで、ライ麦パンの上にバターとさまざまな具材を乗せて食べます。この日はニシンの酢漬けとタマネギ。


前回ご紹介した、スウェーデンの【Lagom】と【Fika】もそうですが、北欧には、人が幸せな時間を過ごすために大切なことが、ちゃんと言葉になって文化として根付いているのだなぁと感じます。私にとって【hygge】は、心の中に暖炉の火がゆっくりと燃えるようにリラックスできる、自分が自分でいられるようなあたたかい人間関係や場所であり、その時間全てです。


友人はこんなふうにも言っていました。


「hyggeってすごくよい時間だけど、ずっと一生つづくものではないの。そうじゃない日常の中に持つからこそ、特別な時間なんだと思うわ」


デンマークでこの【hygge】を教えてもらい、しあわせについて大切なことをを学んだように思います。ついつい自分を見失ってしまうこともあるけど、そんな時は『Skal vi hygge? (hyggeしよっか)』と、自分に言うようにしています。


さて、いよいよ年の瀬ですね。北欧のお正月は、お友達やカップルでホームパーティーを開いたり、クリスマスよりもカジュアルな感じです。そうそう、デンマークのお正月は、本格的な花火がそこら中の家から上がるんですよ。面白いですよね。それでは、みなさま!良いお年をお迎えくださいね♪


【バックナンバー】

#7LagomにFikaしよう!

#6「北欧モダンの父」が作った森も墓地

#5ショートステイ先の決め手

#4お宝探しが運ぶ出逢い

#3北欧の人たちが待ち望む日

#2Imayaのはじまり

#1自己紹介


【プロフィール】


鍋島 綾(富山県生まれ)

大学でデンマーク語と北欧社会福祉を専攻。会社員勤めの後、アンティークバイヤーとして、2016年から北欧と日本の間を行き来している。

・Instagram:https://www.instagram.com/imaya.vintage/

・YouTube:https://www.youtube.com/@imayatravel/featured

・オンラインショップ:https://imaya-antique.com/


企画・編集/永井千晶