『のどかごはん12ヵ月』#2卯月 新じゃがとたこの炒め物

2024/4/24 15:39:50

春先、スーパーには新玉ねぎや新じゃがが並ぶ。玉ねぎもじゃがいもも、年中食べられる野菜ではあるけれど、若いそれらは、またフレッシュな味が楽しめる。


せっかく調理するのならば、簡単かつおいしく食べたい。新じゃがは、たわしで洗い(皮は新じゃがの場合、むかない派)ひとくち大にころんころんと切る。私はこれを、たこと炒めるのが好きだ。


今日はスーパーの魚介コーナーにあった、モロッコ産の立派な茹でたこを買った。つやつやとした身の赤茶色が、美味しそうに見えたから。たこもじゃがいもと同じサイズに、一口大に切っておく。


新じゃがは切ったあと、耐熱容器に入れてラップをかけ、600ワットで4分蒸したらほこほこに火が通った。ご自宅のレンジも、各家庭によって蒸せる塩梅に違いがでるので「まず3分ほど蒸してみて、足りなかったら1、2分ずつ追加でレンチンする」というやりかたを私はふだん採用している。


フライパンにオリーブオイルを熱して、蒸したじゃがいもとたこを入れ、じゃっじゃっと炒めていく。もうどちらも火が通っているため、短時間でかまわない。もし、にんにく風味がお好きであれば、油を敷いたあとにきざみにんにくや、にんにくチューブを入れてもよい。


塩コショウをお好きなだけ振って、できあがりだ。粉パセリなども、ちらしたらおしゃれ感が出る。


どんなに疲れていても、なるべく手間のかからないやりかたで副菜がさっとつくれると、体も心もほっとする。ごはんをおろそかにしない、という意識は大事だけれど、楽につくってしまうことは決して悪いことではない。


たくさん調味料をブレンドして、複雑な味を楽しむ、そういう日があってもいいと思う。けれど、体が求めているのは、なるべく調味料自体が少ない、心身に負担のかからないひと皿だったりもする。


塩こしょうとオリーブオイルだけなのに、旬の新じゃがとたこの旨味で、この炒め物はびっくりするほど美味しい。どうしても複雑な味にしたかったら、ゆず胡椒を加えたり、タバスコやケチャップ、マヨネーズなんかをかけたり、いろいろ味変の余地があるのも楽しい。


疲れた日に、ささっとできる一品でもある一方で、家族や友人が集まる食事会のひと皿として出しても、喜ばれるように思える。


じょじょにあたたかくなってくるいまこのとき、旬の食べものを味わうことで、さらに気持ちまで上昇気流に乗せてゆきたいものだ。




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【プロフィール】


上田聡子(作家)

石川県輪島市出身。PHP文芸文庫「金沢 洋食屋ななかまど物語」、すずき出版月刊購読絵本原作「ゆきのひのふろふきだいこん」などを手掛ける。生まれ育った北陸の四季折々の風景とおいしい食べものが大好き。


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企画/永井千晶

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