いよいよ来月、デンマークに向かうことになりました。今、その準備の真っ最中です。今回は、日本を発つ前に、Imayaのはじまりについて、お話したいと思います。
私の祖父は、高岡市の古い商店街で、骨董屋を営んでいました。ガラスの重い引き戸を開けて中に入ると、古い壺や茶道具、鉄瓶、火鉢に掛け軸と、雑多に積まれたものが目に飛び込んできて、柱時計のチクタクチクタク、ゴーンゴーンという音が聞こえ、いろんなものが混じり合った、不思議な匂いがしました。
祖父は、よく来たねと笑顔で出迎えてくれた後、火鉢で湯を炊いたり、道具の手入れや金継ぎをしたりと、いつも何かしら、せかせかと動いていました。週末には、祖母と骨董市に出店をしていて、そこに行くと無料の自販機があって、好きなだけジュースが飲めるという安易な理由と共に、大好きな祖父母によく会いに行ったものです。
祖父は、私が12歳の時に病気で亡くなってしまいましたが、その数年後、今度は母が、飛騨高山で古道具のお店をはじめました。そんな幼少期だったので、当時「古いものが好き」なんて感覚は全くなく、ただ常に古いものが、空気のように周りにあるという暮らしでした。そんな私が「古いものっていいかも」と初めて意識したのは2016年、日本を飛び出し、学生時代以来、再びデンマークへと渡った時のこと。
1年間「やりたくないことはやらない!」とだけ決めて、まったりと北欧のゆるやかな時間を楽しむ中、心がワクワクして必ず足を止める場所がありました。
それは、週末に各地の広場で行われていた蚤の市や、どの町でも必ず見かける、ひとつ入った静かな通りの古びたアンティークショップでした。
ショップの古い扉を開け、独特の匂いとたくさんのものが目に飛び込んできた瞬間、小さな頃にかくれんぼをして、見つかるか、見つからないようなドキドキに似たあの感覚、そして、大好きだった祖父に会えたような懐かしい気持ちに包まれました。
一見、ガラクタにも見えるけど、それぞれのストーリーを感じる奥深さ。見れば見るほど、時代を経た北欧の古いものたちの虜になりました。忘れていた幼い頃の、心躍る瞬間を北欧の地で思い出し、集めたものを帰国後に少しずつ販売したのがImayaのはじまりです。
6月からデンマークとスウェーデンへ、今年最初の買い付けに行ってきます。今回は一体どんな出会いがあるか、かくれんぼの時のようなドキドキワクワクを、既に少しずつ感じつつある今日この頃です。次回はデンマークからお届けします。
【プロフィール】
鍋島 綾(富山県生まれ)大学でデンマーク語と北欧社会福祉を専攻。会社員勤めの後、アンティークバイヤーとして2016年から北欧と日本の間を行き来している。
・Instagram:https://www.instagram.com/imaya.vintage/
・YouTube:https://www.youtube.com/@imayatravel/featured
・オンラインショップ:https://imaya-antique.com/
企画・編集/永井千晶