かぼちゃの一般的な食べ方といえば、やっぱりそぼろ煮だと思う。甘辛いお醤油味で、ひき肉そぼろのあんがかかったかぼちゃは美味しい。でも、いつもいつも調理法がそればかりだと、飽きてしまう。それで、何かほかの変わった食べ方はないものかと試行錯誤して、このレシピがいいな、と。
4つ割りのかぼちゃは、さらにひと口大に切る。硬いかぼちゃを切ること自体、苦手だという人はいるかもしれない。その場合は、まずレンジで2、3分チンして柔らかくしてから切るのもいい。私は出刃包丁を使って、ダン!と切ってしまうが、くれぐれも慣れないかたはお気を付けて。
鍋に、水、バター10gほど、少量の塩を入れて沸かす。そこに細かく切ったベーコンと、切ったかぼちゃを入れてよく煮る。水の量はかぼちゃがひたひたになるくらいでいい。かぼちゃに火が通って柔らかくなれば完成だ。
たいへんシンプルな味付けだが、なにがいいって、甘味のあるかぼちゃにほんのり塩味がつくと、かぼちゃの甘さがとてもひきたつのだ。さっぱりとしているので、くどくないし、またベーコンからよい出汁が出て、それがかぼちゃ本体に染み込む。そぼろ煮しか食べたことのない人は、思い切ってぜひ作ってみて欲しい。
亡き祖母は、たいへんかぼちゃの好きな人で、よく祖母のつくる食卓にもかぼちゃが並んだ。「いもくりなんきんは女の好物」と昔から言われてきたが、たしかに祖母のつれあいの祖父や、私の父はそれほどかぼちゃは好きでない、というか思い入れがなかったようだ。
私は、幼い頃は「もそもそして、それほど好きじゃないかも」と思っていたかぼちゃの煮物が、年を経るごとに好きになってきたように思う。そしてかぼちゃ料理をするときは、決まって祖母のことを思い出す。
祖母は、このかぼちゃの塩バター煮を食べたら、どういう感想を述べてくれただろうか。「ハイカラやねえ」とでも言ったかもしれない。そんな祖母の反応を、心のなかで想像しつつ、私は今日も台所に立つ。
まだ試してはないが、ベーコンがなかったら、ツナをいれても代用としていけるのではないかと思う。もちろん、肉そぼろでも。出汁が出て、かぼちゃに染みこむような食材であれば、塩バター煮の味付けはなんでもまとまるのではないか。
かぼちゃの秋の旬に向けて、収穫が始まる夏。スーパーにはごろごろと、あたたかみのある黄色が鮮やかなかぼちゃが並ぶ。ぜひ、お試しいただきたい一品である。
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【プロフィール】
上田聡子(作家)
石川県輪島市出身。PHP文芸文庫「金沢 洋食屋ななかまど物語」、すずき出版月刊購読絵本原作「ゆきのひのふろふきだいこん」などを手掛ける。生まれ育った北陸の四季折々の風景とおいしい食べものが大好き。
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企画/永井千晶