『のどかごはん12ヵ月』#6神無月 切り干し大根ときゅうりの中華和え

2024/10/09 12:00:00

日本のお惣菜の定番のひとつ、切り干し大根の煮物。にんじんの千切りや、細かく切った油揚げと炊いたその滋味深い味は、みんなに愛されるものだ。


けれど、切り干し大根を煮物以外に使うレシピを、試したことがあるだろうか。実は、サラダみたいに和え物にしても、たいへん美味しい一品となるのである。


今回ご紹介するのは、切り干し大根ときゅうりの中華和えだ。切り干し大根は、まず15分ほど水に浸け、柔らかくなるまでもどす。そのあと水からざるにあげてしっかりしぼる。


きゅうりは三等分して、細切りにし塩をまぶしておく。きゅうりがしんなりしたら、一度水洗いして塩を落とし、水気をしっかりキッチンペーパーなどでとる。


しぼった切り干し大根ときゅうりの細切りをボウルで混ぜ合わせ、しょうゆ、すし酢、ごま油を、それぞれボウルにひと回し、そしてすりごま適量を入れてさらに混ぜる。全体に味がまわったら、ちょっと時間をおいてなじませ、できあがりだ。


ごま油の風味がほんのりと香り、しっとりと食べ心地もよい、この和え物は何にでも合う副菜だ。ちょっとした箸休めにもなる。


和食や洋食につけあわせるのはもちろん、エビチリやホイコーローなど、中華料理のそばに副菜としてつけると、とても合う。


煮含めた煮物とはまた違って噛み応えがあり、きゅうりとの食感の違いもまた楽しい。


冒頭に、切り干し大根の煮物の話題を出したが、私はそもそも、この煮物がひじきの煮物と並んで大好物なのである。天日に干された大根の、しみじみゆたかな味が、出汁を吸った美味しさといったら。


それに比べ、この中華和えのほうは、ちょっと違った切り干し大根の顔を見たいな、というときに我が家の食卓に登場してくる。いつものスタンダードな煮物で、ふだんは満足しているんだけど、たまには違う一面も見たいな…というような。


長年連れ添った夫婦が、お互い家ではくつろいだ格好しかしないのに、たまにお出かけのときにちょっといい服を着て見違えるようだった、みたいなものだろうか。


普段の生活で、切り干し大根の煮物しか食べたことがない! でも切り干し大根自体は好物だから、ほかの味つけにチャレンジしてみたい!というときに、もってこいのレシピである。


一度食べたら、また食卓に登場させたいなと感じてしまうのではないだろうか。どうぞ、お試しいただきたい。


【バックナンバー】

#1弥生 梅だし茶漬け

#2卯月 新じゃがとたこの炒め物

#3水無月 即席カレーうどん

#4葉月 かぼちゃの塩バター煮

#5長月 キャベツのあっさり漬け


【プロフィール】

上田聡子(作家)

石川県輪島市出身。PHP文芸文庫「金沢 洋食屋ななかまど物語」、すずき出版月刊購読絵本原作「ゆきのひのふろふきだいこん」などを手掛ける。生まれ育った北陸の四季折々の風景とおいしい食べものが大好き。

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企画/永井千晶