お醤油に、甘味を加えたいとき、何をいったい使ったらいいだろうか。砂糖やみりんは、もちろん定番。ハチミツや甘酒という手もある。今日ご紹介するのは、豚ステーキに和風のソースをからめた一皿だけれども、ベースの醤油には、なんとマーマレードジャムを合わせてある。
自炊を始めて、約15年が経つ。その割に、野菜の刻み方は雑だし、味付けもいつも適当ですますし、料理上手とは言い難い私だけれど、それでも料理をすることを苦痛だと思ったことはない。やっぱり、料理をする作業が単純に性に合っているのだと思う。
今日のレシピ、トーストに合わせるだけではないジャムの使い道として、なかなか面白い一品ができているのではないか。
厚みのある豚肉ステーキ肉は、両面に塩こしょうをして、軽く包丁でたたいておく。小麦粉を全体にまぶし、フライパンに油を敷いてしっかり火を通す。
醤油とマーマレードジャムを、3:1の割合で会わせておく。
豚肉に火が通ったら、フライパンの脂をなるべくキッチンペーパーでふきとり、さきほど合わせた醤油とジャムのソースをフライパンに投入し、少しだけ煮詰める。ソースがとろりとしたら、できあがりだ。
醤油に、ジャムの自然な甘みが足されたソースはすごく風味豊かで、豚肉とすごく相性がいい。食べてみると、ふわりと柑橘系の香りが口の中に残る、美味しい和風ソースになっている。
私は、こちらをいまのところマーマレードジャムでしか試したことがないが、もし機会があれば、いちごジャムやブルーベリージャムでも試してみたいと思っている。
げげー、合わないに決まってる! なんて最初から否定しないでほしい。調味料の組み合わせは、いまや無限大に近い。思いもかけないAとBを掛け合わせることで、新しい美味しさに出会えたら、それは素敵ではないか。
人は、いままでやったことのないチャレンジをすることで、脳も発達すると聞いたことがある。私にとって、未知のレシピを試すことは、ちょっとした冒険に近い。その楽しい冒険を繰り返すことで、知らなかった味に出会え、新しい世界が広がる。
新しい何か、に出会うことを、恐れたりせず、いつでもわくわくしているそんな子供みたいな大人でいたいと、日々思っているのだった。
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【プロフィール】
上田聡子(作家)
石川県輪島市出身。PHP文芸文庫「金沢 洋食屋ななかまど物語」、すずき出版月刊購読絵本原作「ゆきのひのふろふきだいこん」などを手掛ける。生まれ育った北陸の四季折々の風景とおいしい食べものが大好き。
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企画/永井千晶